風雲児たち

みなもと太郎:著
潮出版

           
         
         
         
         
         
         
    
    

 歴史漫画といっても学習漫画ではない。なんとギャグマンガなのである。坂本竜馬を始めとする幕末の風雲児たちを描くことが作者の意図だったと思われるこの作品だが、物語は関ヶ原から始まり、執筆に十年の歳月を費やしね今なお幕末に至っていないのである。
 移り変わりのめまぐるしい漫画界にあって、稀有(けう)な作品といえよう。なぜ十年もたってしまったのか。それは作者が歴史の連続性と、何よりその面白さを知ってしまったからに違いない。
 とにかく、ギャグマンガ家である作者の視点と、視線がいい。たとえば大黒屋光太夫の旅ですら、笑いを基本に物語られる。井上靖の語り口とはずいぶん違う。読者はギャグ作家独特の世界観をそこに見て、改めて歴史のもうひとつの真実をかいま見るだろう。
 歴史に「if(もし)」はないと知りながら、たとえば林子平の「海国兵談」の出版が田沼時代だったら……と、しばし思いをはせつつ、また、この作品を自分が小学生時代に読んでいたら……などと、つい思ってしまうのである。(相)=静岡子どもの本を読む会
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