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こういう仕事(子どもの本の紹介、などという仕事)をしておリますと、一番たくさん訊かれるのは 親御さんからの「ウチの子に、どういう本を選んだらいいでしょうか……?」 というものと、おもに児童図書館員からの、 「どうしたら、いい本を見る眼、を養うことができるでしょうか……?」 というものです。 というわけでこの本は〃悩める親御さんたち〃および〃悩める児童図書館員、教師、幼稚園や保育園のかたがた〃その他、本を読んでおもしろい思いをしたい、というすべてのかたたちのために書かせいただきました。 一応、対象年令はストーリーがわかり始める三〜四歳から七、八才…小学校の二年生あたリまでに絞リましたが、実は〃絵本〃というのは製本の形式であって、内容を規定するものではあリません。 いま、絵本の世界は何回目かの改革期に入り、子どもだけのための絵本、大人だけのための絵本、わかる人になら何才でも・・というような新しいタイプの絵本が出てきています。 そうした本を私は〃ヤングアダルト絵本〃と呼んでいますが、現代の新しくて難しいテーマ-ストレスやアイデンティティの欠如、エトセトラ、エトセトラ-を描いていて、いま現在そういう状況にいるか、ある程度年齢がいかないと理解できないだろうというものと、内容的には〃こういうふうに愛してくれたらなあ〃と思えることをテーマにした絵本は、たとえ三才児用であろうとも、いまの日本の疲れたティーンエージャーたちに愛され、彼らを癒してくれるでしょう・・・。 そんな本にはタイトルの下に、@マークをつけました ので、参考にしていただければ幸いです。 だから中学校、高校の司書のかたがた、これは絵本のガイドブックだけど、ぜひ読んでみてください。 それと、このブックガイドには私、赤木かん子が〃本として〃秀れている、と思うものを最優先いたしましたので、子どもたちが大好きな本がたくさん抜け落ちています。 というのは、ひとつには、ここに載っている本を全部読めば(あるいは揃えれば)ある程度絵本を見る目ができ、基本的な本棚ができるだろう、というのを目的にしたのと、子どもたちが大好きな本の大部分は、たいていその時代の最先端をいくもので、たとえば図書館の棚つくリには絶対に必要なものですが、かなり入れ替わりが激しいからです。 ですから親御さんたちに、これは心からのお願いですが、子どもたちが「好き!」といって抱きしめた本を、自分が気に入らない、もしくは悪い本だと誰かがどこかでいっていた…ということで、取り上げるようなことはなさらないでください。 ここには〃秀れた〃絵本を掲載するように心掛けましたが、それは〃秀れた〃もののほうが、つまらないものより「おもしろい!」「当たり!」ということが多いからで、実際にここに載っている本の大部分は子どもたちに喜んでもらえると思いますが、もしある子が「つまんない」といったら、それはその子にとっては〃つまんない〃本なのです。 それに子どもたちが大好きな本のことは私に訊く必要はあリません。 身近なお子様にお訊きになるか、あるいは図書館で〃今日返ってきた本〃コーナーを見てください。私に訊くよリよっぽどそのときどきの正確な情報が得られます。 だから、このブックガイドには入ってないけど、私が〃ノンタン〃や〃アンパンマン〃が嫌い、というわけではあリません。澄ました顔した偽善者本よリ、ずーっとマシですよ。 また、やはリ数が限られているので、できるだけまだ脚光をあびていない、新しい本を優先して既に有名で、絵本として定番になっている本の多くは省かせていただきました。デュボアサンやウンゲラー、スティーブンスンのように、手に入る本はすべて揃えてほしい作家もかなりいますが、とても全部は載せきれないからです。 そういう本は、いままでの絵本のガイドブックに必ずといっていいほど載っていますので、あちこちみていただければ、たいてい揃うと思います。 ですから、たとえば個人の家ではなく、児童図書館の本棚は、ここにある本だけそろえても、本棚はできあがりません。 お子様や自分のところのお客さまをよくにて、自分が覚えた作家、画家、翻訳者、出版社などを手がかりに、自分で本を増やしてやってください。 本も時代とともに変わります。とくに1990年代は、いままで定番だった本が古くなり、かつ最先端を描いた新しい本はこれまたすぐに使えなくなるものと生き残る物に別れる、という激動の時代です。それを見抜くのはかなり大変な仕事でしょう。 ともあれ私は日本中をまわってっていて、本屋も図書館も近くになく、それでもおもしろい本を読みたい、と切望する人たちと、情報もなく、予算もなく、司書として基本的な訓練もされておらず、それでも子どもたちを喜ばせるために、手さぐりで必死になっていい図書館をやっていこうとしている、たくさんの優秀な人たちに会いました。 この本は、そういう人たち一人一人を思い出して書きました。 どうぞ、この本があなたたちのお役に立ちますように。 あなたがたの親切と熱意と友情への、私からの心からのお礼となりますように。
1995年9月
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