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今、自分がやりたいことができている? 自分が本当に求めているのは、いったい何? 考えれば考えるほどいらだってしまう問いをめぐる、ひとりの女の子の冒険を描いた『HELP』(安住磨奈著、シンコー・ミュージック・1200円) 主人公のユカが、実にチャーミング。他人に指図されるのを先天性「我慢できない」病、いつもトラブルの発生源で、ほんっとに憎めないイイ性格してる女。怒っているのか笑っているのか以外はトンチンカンな言動がめだつイクオ、自然度がほとんど宇宙人のマモル、とロッカーたちのキャラクターも、「いるいるこういうやつ」と納得してしまう。 メジャーデビューを目前にして失踪したボーカルのコウヤが、信仰宗教の本部にいるらしい。神サマ相手のなんとなく場違いな奪回作戦に、クビをつっこんでいくユカ。少しずつ、彼女の内と外で何かが変わっていく。 「好きなことをやりつくすって常日頃豪語しているくせに、それは・・・全精力傾けなくたってできることばっかだもん。本当に、が何を指すかなんて、わかんないよ」と思うユカ。「真実の感覚」を与えてくれるのは、快楽と奇跡を感じさせてくれるものは、ロック? それとも宗教? 「自分で自分の教祖になるのは難しい」とあるけれど、ほんとにそうだ。簡単には出ない答えに向かい、自分のペースで歩くユカに拍手。(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1991/06/01
テキストファイル化 妹尾良子
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