ヒッピー・ハッピー・ハット

ジャン・マーク著

福武書店

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 どんなに仲がよくても、どんなに好きでも、自分と他人はやっぱり、ちがう人生を生きていく存在だということ。これは、実はあんまり気がつきたくない真実、というやつかもしれない。相手が好きならなおさらだ。
 『ヒッピー・ハッピー・ハット』(ジャン・マーク著、久慈美貴訳、福武書店・1200円)に集められた三つの話には、そのあたりの微妙なきもちが、さらっとユーモラスに描かれている。
 表題作は、12歳のソニアが、五つ年上の姉フランキーと久々に休日を過ごす話。この姉が、なんとすでに一児の母なのだ。なじみのない大人の顔をみせるかと思うと、今度はこどものままの顔に戻るフランキー。ちょっととまどいを感じるけれど、どちらもやっぱりお姉さん、となんとなく納得するソニア。ケースはちがうけど、こんなきもちになったことあるなあ。
 ふたつめは、デートをしてもなんだかちくはぐな15歳のヨーヨーとロバートの話。三つめも、おもしろい。白いガウンを着て、高級アパートの三階から列車を眺めながら朝食を食べるクラウィ(この人は大人)と、通いの家政婦の娘ロンダの話。 主人公たちはけっこうシビアな現実に直面させられるのだけれど、それが深刻ぶらずにゆかいなタッチで書かれていて、センスのよさを感じさせる。(芹沢清実)
朝日新聞ヤングアダルト招待席

テキストファイル化 妹尾良子