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小さい子向けの絵本に、もし使命などというものがあるとすれば、それは子どもを絵本好きにすることであろう。もしかしたら、それが生まれてはじめてのお気に入り絵本になるかも知れないのだ。 そのためには何べんでもくりかえし読んでもらいたくなるような、ひとりでページをめくってみたくなるような、魅力的な内容でなければならない。 中川・あべコンビの「ひろちゃんえほん」シリーズ(全四冊)は、おそらくこのむずかしい使命を達成するだろう、と評者は信じる。四冊目を見終わったら、自然とまた一冊目を開いていた。作中の登場人物に強くひきつけられていたのである。 登場人物といっても、人間はひとり、三歳のひろちゃんのみである。あとはうさぎ、くま、わに、りす、ねずみが、一匹ずつ毎回出てくる。 だれもがことば少なであるが、本当に仲よしなら、おしゃべりはあまりいらない。各巻のタイトルのように「こんにちは」「ありがとう」「おめでとう」「くださいな」くらいで十分だ。 字の読めない子も、すぐにくりかえしの多い文句を覚えて、自分ひとりで読みはじめるだろう。そのとき、ことばだけでなく仲よくする幸せとその方法も覚え始めているのだ。一冊目の最終ページ、みんなでナワトビしている絵など、ちょっと居間に飾っておきたい(斎藤次郎)
産経新聞1998/07/14
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