星と伝説

野尻抱影・著
偕成社

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 君のいる場所から空がみえますか。空はなぜ、あんなに深い色をしているのでしょう。夕焼けは、なぜあんなに美しいのか。でも空は夜がこないとほんとの姿を現しません。
 夜の空を見上げると、なんともいいようもないふしぎにとりつかれます。なぜ、あんな光で呼びかけてくるのでしょうか。あんなにはるか向こうから、こんなにしきりに話しかけてくるのでしょうか。
 同じあの星を、地球上の何千人もの人が見上げているかも知れない。それともあの光は、ひょっとすると、君にだけ、そっと届けられたのだろうか。
 ――どんな民族でも大昔から、この星をみて、どんなにふしぎがったでしょう――
 たとえば〈天の川〉。沖縄の人たちは〈こと座〉〈わし座〉の姿に羽衣の天女と七夕の悲しみをみました。
 たとえば〈おとめ座〉。ギリシャの農業の話。この世の植物、穀物、果物のほか、大地から得るすべての恵みのこと。
 なぜ、冬になるのか。春と夏と秋があるのか……。空想と人々の思いを、二十二の伝説にとりあげて、さまざまな民族の物語で描く。野尻抱影の、星へのあこがれが伝わってきます。
 
(仁)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化武像聡子