人は相応しい死を死ぬ

R・ライト・キャンベル
石井清子訳 晶文社

           
         
         
         
         
         
         
     
 実にカッコいいタイトルです。まるでハードボイルドみたい……。
 おまけに版元が晶文社で、ということはあのシブイ表紙がついてるってことで……。児童書を追っかけてる人たちがこの本を見つけるのは難しいかもしれません。
 でも、もちろんこの本はこの本でいいんですがね、キマってて-。
 今みたいに表紙と中味とそれから読者がズレにズレてる時代に、商品(本、てことね)をうまいこと宣伝するのって、ホント、難しい……。
 十進分類表どおりに何も考えずに並べていくと、なんともそっけないとりつくしまのない本棚ができてしまいます。
 今〃死の尊厳〃をテーマにした本は心理学、一般のドキュメンタリーおよび小説、児童書のなかにあリますが、この本はそのなかでもテーマ的にラスト、の部分に入る一冊……それも極上品の一つなので、埋もれてしまうのはもったいない……この本に、おおっ、といってくれる人の手には届けたい、一冊です。
 ふつう〃老人問題と死〃がテーマの物語は男の老人と男の孫になります。 男の子や男にしとくと、食事の世話やそういうシンドイこと抜きにして、純粋に〃人間としての尊厳〃について語れるからでしょう。
 それだけに話を絞って書くのならそれはそれでいいのですが、この方法は下手するとインチキになりかねません。女だって、手伝ってくれる人を一人やとえるなら、仕事と老人の世話の両立とか、過労で悩んだりヒステリー起こしたリせずにすむんですから-。

 この物語は、常日ごろ人間としての尊厳を守って死にたい、といっていたおじいちゃんと、なかのよかった孫の男の子の話です。
 ついにおじいちゃんが倒れ、病院でチューブにつながれたおじいちゃんを見た彼はショックを受け、考えに考えたあげく、寝たきりのおじいちゃんの世話は全部自分がみる……という決心をして、まんまとおじいちゃんを病院からリヤカーかなにかで連れ出すのです。
 それは確かに大変なことで、考えるだけでもシンドイことですが、でも、これから先ずっと、ぼくはおじいちゃんを裏切った……と思いながら生きていくことに比べればずっとマシ、だろうと思います。
 まわりがそれに協力してくれればもっとあリがたいけどね。
 でも、家事、老人の身のまわリの世話を男の子がやる……というストーリーは今でも画期的でしょう。
 子どもの本は、マジメで真剣で純粋で気高いものを描くのに一番むいてるジャンルですから、死についてもむいてるし、事実いい本が多いですが、読者が大人の場合はそれプラス、老人ホームの虐待に、もと警察官の老人が怒って、ピストルをどこに隠したか忘れてしまう自分のボケと戦いながら、冷酷なナースを殺していく『キャプテン』(東京創元社)とか、この本とかを足していくと、児童書が描ききれない部分をカバーできます。
 どんなジャンルでも得手不得手があリ、一○○パーセントカバーすることはできないんですから-。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14)