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―パンツまだ洗ってないのか、自分の。 ―してないね。 のっけから、父子家庭、林くん親子のこんな会話から始まる。 主人公「森くん」の目を通して語られる林くん親子や、自分を異常にひいきしてくれる女美術教師は、個性的で妙に存在感がある。 「ホーン岬まで」のほか、八編からなる短編童話集は、作者の「こだわり」が随所に感じられる。 どの作品も共通しているのは主人公の名前が「森くん」であることと、舞台が基地の町、立川であること。 さまざまな「森くん」が、さまざまな人とかかわる中で生と死、孤独、挫折など、いわば、心の陰の部分と向きあっていく。 それが理屈でなく、時になつかしく、時に温かく、時に哀(かな)しく語られる。 良質のフォークソングを聞いた後のような読後感だ。
(桂)=静岡子どもの本を読む会
テキストファイル化山本京子 |
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