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ある日突然、白人に指図された見知らぬ男が、村の家々に白ペンキで番号を書きなぐりはじめた。これが、この本の主人公ナレディの村をおそった災難の始まりだった。黒人たちは理由も示されぬまま、住みなれた村を追われ、「ホームランド」と名づけられた不毛の地に強制移住させられることになったのだ。 一九九三年まで続いた南アフリカ共和国のアパルトヘイト(人種隔離政策)の苛酷な実態と、これに立ち向かう黒人たちの、とりわけ若い人たちの抵抗運動が、きびきびした訳文で語られていく。 中学生たちは、校長の監視下で祈とう集会を計画する。生徒に招かれた司祭は、説教のあと「人間にとってもっとも重要と思われる五つの特質を書きなさい」と、小さな紙を配る。子どもたちの手から手に渡されたその紙は、白紙ではなかった。紙の上のほうに「このチャンスを生かして、移住に反対する闘いのわたしたちの代表を選びましょう。推せんしたい人を五名書いてください」と書いてあったのだ。 この選挙で、ナレディは代表のひとりとなる。苦戦の連続にもかかわらず、炎のような連帯感と希望を失わずに抵抗しつづける中学生の姿に、こちらの胸まで熱くなる。いま日本の中学生といっしょに読むのに最適の一冊ではないだろうか。(斎藤次郎)
産経新聞 1997/09/09
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