パパは専業主婦

キルステン・ボイエ
遠山明子訳 童話館 1996

           
         
         
         
         
         
         
     

 この物語は、12才の女の子ネールの目を通して書かれている。家嫉は.4才の弟生まれたばかりの弟ヤーコブと両親。そして、ヤーコブの出産をきっかけに父が仕事を休み、母が働きはじめるという新しい試みが始まる。突然の逆転に家族が奮闘していく様子や、ネールの憧れている男の子、また逆に思いを奇せてくる男の子、そしてネールとは対照的な家庭に育っている友人のカーチャとの関係を通して、ネールが自分自身を見つめていく様子がユニークに描かれている。
 話の核心は主婦業を始めた父が、「週に3回テニスをしたい。」と書いだすことから始まる。育児中、良き妻・母を務めるため、自分のやりたいことを抑えていた母にとって、父の態度はがまんならず、男女間の不公平さを感じて言い争いとなり、ついには家を飛び出してしまう。一言で「男女共生」といっても、今までの教育や経験の持つ影響力は大きい。理屈では分かっていても”女は、男は、こうあるぺき“という固定観念が体の奥にしみついている。翌日、母はネールに逆転生活の難しさについて自分の正直な考えを話し始める。そして、両親は、すぐには慣れないだろうが、これからも話し合いを重ね、今の生活をやり遂げていこうとする。このことは、これから大人になっていくネールたちの価値観の形成にも人きくかかわってくるだろう。
 21世紀がそこまできている今、新しい家族観を考えさせられる1珊である。(N)
箕面市学校図書館司書連絡会発行「教職員むけおたより『L-メール』」1999/12