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十二歳のレオの両親は、五年前から別居中。ふつうの日は小学校の先生をしているママと暮らし、週末になると画家のパパのアパートにやってくる。レオはなんとか二人のよりをもどしたいと思っているが、それまでは「二人のあいだで、規則正しく」暮らすほかはない。 ある土曜日、パパのところへ行く途中立ち寄った本屋で、レオは緑色の革表紙の立派な本を見つけた。それは「魔法のかけ方」を記した研究書で、ふと目にとまったあやしげな詩を暗記してしまったために、とんでもないことが起こった。その詩は、人を金魚に変える魔法のじゅ文だったのだ。 レオが不用意に詩を暗誦したとたん、昼食を用意していたパパが金魚になってしまった。むろん、レオには魔法をとく方法が分からない。親友のエルワンに協力してもらい、金魚を安全に「保護」する一方、例の本を探しに行くが、すでに売れてしまっている。 おとなの助けを借りるわけにはいかない。第一おとなは魔法なんていっても信じてくれっこない。こうしてパリ中をかけめぐって本を探し、魔法をとく謎に挑む奇妙な冒険がはじまる。おとなたちに感づかれてはならない。パパのためには一瞬の猶予もないのだ。 全編ドタバタのユーモア小説なのだが、レオとその仲間の子どもならではのパワーと才気が、独特の解放感とともに爽やかな読後感をもたらす。(斎藤次郎)
産経新聞1999/01/19
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