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今年のはじめに、北野隆一という現役の東大生が『プレイバック「東大紛争」』というドキュメントを発表した。これがなかなかいい。当時の学生がなぜあのような運動を起こしたのかという素朴な疑問から出発して、かの有名な安田講堂の占拠を中心とした紛争に、新しい視点からメスを入れている。この本は君たちと同時代の若者が書いた本だ。それだけに冷静で、批判すべきところは批判しながら、学ぶべきところは学びながら、そしてときには戸惑いながら、二昔前を追いかけていく姿はとてもすがすがしい。 この本のなかにこんな文章がある。「学生たちが不条理なことにぶつかったとき、立ち上がって運動するということは、ほんの二十年前まではそんなに特別なことではなかったのだ。普通の学生が、率直に自分の怒りを表現できていたのだ(ちょうど現在の中国の学生のように)」 「現在の中国の学生」というのはいうまでもなく一年前の天安門事件を中心とした学生運動に対する言及だ。いったい彼らがなにをどう考え、どう感じていたのか。新水社から出た『証言! 中国からの声』(中道太郎編・一五〇〇円)は、まさに当時の中国の若者たちの声をそのまま収録した貴重な記録だ。彼らのストイックなまでの情熱と思い入れ、そして事件後の絶望、さらに彼らを取りまくあまりに酷しい現実が生々しく描かれている。 二十年前の日本での学生運動と、昨年中国での学生運動、君たちはこれらをどう受け止めるだろうか。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席90/06/24
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