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ただいま日本の出版社は、どこもボーダイな量の品切れ・絶版本を抱えております。従ってそういう本を再刊してくれ、という声もあるわけです、特に子どもの本の世界では-。 本なんてすぐ古くなるものだし、良い本だからってだけで今も現役バリバリ、第一線、とは限らない…なんていうと、そんな! 良い本は良いに決まってるじゃないですか! という逆上した声のつぶてがとんできそうだな。 私としては「ノスタルジー」で三千部作ったって一向にかまわないと思うんですけどね、それを今の子に「読め」と強制しないなら。少数ではあるけどそういう本の読み手だって確かに存在するんだから。 だけどなかには、コレはまだ現役、引退してもらっちゃ絶対困る、という本だってある。 今回岩波書店が出した「まぼろしの小さい犬」は以前、別の出版社が出して長く絶版になっていた本。やれやれ、やっと出たかと胸をなでおろしたしだいです。 人に愛されたいという願いを、犬を飼うことでうめあわせようとしたために、昼も夜も空想の「犬」のことばかり思って、あやうくそっちの世界から帰ってこられなくなりかけた少年が主人公です。ね、今の日本の子どもたちの先輩でしょ? 一九六二年の作品です。(赤木かん子)
『赤木かん子のヤングアダルト・ブックガイド』(レターボックス社 1993/03/10)
朝日新聞 1989/07/23
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