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版元の宣伝文句によれば「エンデが世界の子どもたちに遺(のこ)した最後の短編集」である。といっても新作は表題作はじめ五編だけで、あとの十四編はすでに絵本などのかたちで翻訳紹介ずみのものだ。 「魔法の学校」というお話は「望みの国」を訪れた語り手が、その国の学校で子どもたちが魔法を学ぶプロセスを第一課から第七課まで見学し報告するという体裁をとっている。 魔法を使うためには「望む力」がなければならないと先生は言い、望む力の規則をこう黒板に書く。 「1ほんとうに望むことができるのは、できると思うことだけ。2できると思うことは、自分のお話にあうことだけ。3自分のお話にあっているのは、ほんとうに望んでいることだけ」 ほんとうの望みというのは、自分のほんとうのお話を生きているときにしか見つけることはできない。他人の思惑を気にしたりしていれば、「別の人のお話」を生きてしまう。「いい人だと思ってもらいたい」などという望みは、永遠に実現できないのだ。 魔法という魅惑的な主題に即してエンデはいつもながらに深い注意を語る。ときどき、またその話かなどと思いながらページをめくったが、でも、もうこういう物語が新しく書かれることはないのだ、と思うと残念だし、さみしい。(斎藤次郎)
産経新聞 1996/12/27
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