マイ・ラブ、マイ・ラブ!


ローザ・ガイ


藤本和子訳 筑摩書房

           
         
         
         
         
         
         
     
 皆さん、アンデルセンの「人魚姫」の話は知っているでしょう?
 ほらあの、溺れかけてた人間の王子様を助けて、その王子様に恋をして、無理して人間の姿になって近づいて、さんざんつくしたのに、結局裏切られて死んでしまった人魚のお姫様の話。でも、王子様の方には、裏切ったなんて意識は全くなかった。そこに悲劇の根っこがあったという、あの話。
 今月の本『マイ・ラブ、マイ・ラブ!』は、アメリカの黒人女性作家ローザ・ガイがこの話を現代風にアレンジしたもの(藤本和子訳 筑摩書房)。と言っても、主人公は人間の女の子。それなのに、相手は彼女を「人間」として見てくれない。悲劇の根っこはそこにあるわけで、それはなぜかと問いかけるのが、多分作者の目的なのだと思う。
 舞台は西インド諸島あたりの架空の島。主人公は、貧しい百姓の娘。相手は、大富豪の息子。けれども、彼女の恋の障害になるのは、貧富の差だけではない。そんな単純なことじゃないのヨ、というのが、思わずバラしたくなるこの本の売りネタであります。読んでね。(横川寿美子

読売新聞 1989/07