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物語の舞台は、こことはちがう世界にあるイギリスである。そこも一応、現代社会らしいのだが、自動車より馬車が一般的だったり、いきなり竜とあっても驚かない程度に異世界なのだ。その世界には、クレストマンシーという名前のハンサムな大魔法使いがいて、その世界を動かす大事な原理であるところの魔法や、魔法使いたちを、管理している。魔法の支配者といってもいいのかも。 主人公は、そんな世界に生まれた、気弱な少年キャット。魔法は使えない。しかし彼の姉は、世界征服の野望を持つ美少女の魔女である。ある日、海難事故で孤児になった姉弟だったが、そんなふたりをクレストマンシー(なんとお城に住んでいるのだ)がひきとってくれるという! まるでシンデレラみたいな話だけれど、キャットは気乗りしない。彼にとっては、大好きな姉との平凡でも温かな暮らしがあればよかったのだ。だが、そんな彼を城で待っていたのは、恐ろしい陰謀と意外な裏切り、いなくなる姉と、姉とそっくりだが別人の謎の少女だった……。 話の展開が起伏に富んでいておもしろい。「ハリー・ポッター」と共通したような舞台設定をもっているので、あの本が好きな子どもたちにはおすすめかも。ちなみにこの本、親世代には『魔女集会通り26番地』というタイトルで知られていた本がよみがえったものである。(村山早紀) |
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