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森の中で、お父さんとお母さんと一緒に暮らしているクマの子のまこちゃんが主人公。 秋の森は、色とりどりに変化する木の葉や、たくさんの木の実で、とてもにぎやかだ。赤い葉っぱが大好きなまこちゃんは、自分も赤い色のクマになりたいと叫び、樹上のカケスたちに笑われる。 それでもどうしても赤いクマになりたいというので、カケスたちは真っ赤に色付いた山ブドウの葉をくわえてきて、まこちゃんのからだじゅうにさしてやる。まこちゃんは満足して、葉っぱを振り落とさないようにお母さんのところへ行く。 ところがお母さんは、それがまこちゃんだと気づいてくれない。 そこでの母と子のやりとりが、なんともほほえましく、幼い子どもの微妙な心の動きをしなやかにとらえた作者の目が生き生きと感じられる。 秋から冬にかけての森を舞台に、木の葉や木の実などの色とりどりの自然からの贈り物を鮮やかにちりばめて、まだあどけないクマの子のまこちゃんと、カケスやネズミなどの森の小動物とのかかわりを、やさしく見つめるお父さんとお母さん。 豊かな自然の中での、ユーモラスで幸福感に満たされた心地良い物語である。 片山健の描くまこちゃんのキャラクターと、色鮮やかに染まった森の描写もまた魅力的だ。(野上暁)
産経新聞 1997/01/12
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