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アフリカらしいアフリカに出あえた! 『ママ・アフリカ』 (角川書店・一、四○○円)は心からそんな気持ちにさせる青春小説だ。 ニューヨークで身を持ち崩したギ夕リストのコウは昔の恋人に誘われケニアにいく。「ハイになっている時、ぼくはいつだって出口へのディレクション、方向を探しているのだ。だが、そいつは簡単には見つからない。そして薬が切れ、汚れた大地に舞い降りると、ぼくにはもう出口を探そうとする意志さえ…。 そんなふうだったコウはアフリカで、大地のうねるようなバイブレーションに共鳴し、熱い自然の鼓動にゆさぶられ、黒い肌のジュリエッ卜と激しく抱き合ううちに、全身で「世界のママ(ママ・アフリカ)」を感じるようになる。バックに流れるロック、ブルース、レゲエ……。 ここには、力強く、荒々しく、恐ろしく、そして優しいアフリカが驚くほどリアルに描かれている。初期の『壜の中のメッセージ』から一貫して、作者の描き続ける青春は常に挑戦的だ。(金原瑞人 )
朝日新聞1993
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