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クリスマスの月。けれど大きな地震に遭ったトルコや台湾では、住む場所を失った多くの人びとが悲しみと疲れに心を痛めています。そのよるべなさは、程度の差こそあれ、また現代に生きる私たち自身にも感じられることです。ありのままを受け入れてくれる暖かいスペースがどんなに必要とされていることでしょうか。 このファージョンのよく知られた詩「マローンおばさん」の鍵となる言葉は room for another です。それを「居場所」という日本語に移された訳者に拍手を送らずにはいられません! マローンおばさん 森のそばで ひとり貧しく くらしていた お皿には ひときれのパン だんろには なべひとつ 誰ひとり、心にかける人もいない貧しいおばさんの暮らし。ある冬の朝、弱りはてたスズメが窓を叩き、おばさんは「あんたの居場所くらい、ここにあるよ」と入れてやります。そして次々にやってくるネコ、キツネ、ロバ、クマた ちに、乏しい場所と食物を分けあたえるのです。 ある朝、おばさんは死を迎え、動物たちはその身体を天国の門まで運んでいきます。目を覚まして驚き、「ここは私の来るところじゃないよ」としりごみするおばさんに、門番の聖ペテロさまは「入って王座のそばへおゆきなさい。あなたの居場所がここにはありますよ」というのでした。 イギリスの作家・詩人で、優れた作品を多く残したファージョン自身の姿が、マローンおばさんに投影されています。また彼女と組むことの多かった画家アーディゾーニの絵がまたすばらしく、作品の雰囲気をふくらませています。 読み聞かせにもよく、巻末に原詩もついているこの宝石のような本は、私のお気に入りの一冊です。(きどのりこ) 『こころの友』1999.12 |
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