マツの木の王子

キャロル=ジェイムズ/作 猪熊葉子/訳
フェリシモ出版 1999

           
         
         
         
         
         
         
    
『大どろぼうホッツェンプロッツ』などが入っていた学研の昔のファンタジー・シリーズのなかの一冊ですが、『ひかりの国のタッシンダ』とともに本当に本の探偵さんで何百回訊かれたかわからない、幻の名作です。
 自分たちは高貴だ、とうぬぼれているマツの林のなかに、たった一本生えてしまったシラカバの少女は、まわりじゅうにうとまれますが、なんとマツの木の王子と恋に落ちます。
 そうして二人はマツ林を出ていき、木工のおじいさんに王子は黒いウマに、少女は銀のシカに彫ってもらい、本物の命を得たのに、病気になったおじいさんのために二人はメリーゴーランドに自分たちを売り、苦難の一生を送るのです。
 それでもそのあいだ、一瞬たりともお互いを愛さないときはなかった、という“気高い”ラブロマンスです。
 二〇〇一年にフェリシモが復刊してくれました。(赤木かん子 『絵本・子どもの本 総解説第5版』)
テキストファイル化佐藤芳美