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『大どろぼうホッツェンプロッツ』などが入っていた学研の昔のファンタジー・シリーズのなかの一冊ですが、『ひかりの国のタッシンダ』とともに本当に本の探偵さんで何百回訊かれたかわからない、幻の名作です。 自分たちは高貴だ、とうぬぼれているマツの林のなかに、たった一本生えてしまったシラカバの少女は、まわりじゅうにうとまれますが、なんとマツの木の王子と恋に落ちます。 そうして二人はマツ林を出ていき、木工のおじいさんに王子は黒いウマに、少女は銀のシカに彫ってもらい、本物の命を得たのに、病気になったおじいさんのために二人はメリーゴーランドに自分たちを売り、苦難の一生を送るのです。 それでもそのあいだ、一瞬たりともお互いを愛さないときはなかった、という“気高い”ラブロマンスです。 二〇〇一年にフェリシモが復刊してくれました。(赤木かん子 『絵本・子どもの本 総解説第5版』) テキストファイル化佐藤芳美 |
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