見えない道のむこうへ

クヴィント・ブーフホルツ作
平野卿子訳 講談社 1999

           
         
         
         
         
         
         
    

 少年は学校でよくからかいの対象になった……。時代おくれのめがねのせいと、それから少し太っていたせいで。
 けれども彼はモノつくりだった。絵を描くのと、バイオリンをひくことの……そしてたぶん文章も----。そうしてこういうことがわかる人は少ないものだ。彼の兄は、彼がみんなと公園でサッカーやたこあげをしているとほっとし、バイオリンを手に取るとうなった。
 けれども彼の家にたまたま一、二年下宿したマックスは放浪画家であり、彼のバイオリンを聞きたがり、君は天才だといってくれた。そうして彼が残していってくれた絵と、本と、話が、少年を守り、育てたのである。
 才能のある子どもにはニ種類の保護が必要である。一つはその才能を理解し、自分で育つ手がかりをもらうこと。そうしてもう一つはふつうの子どもとして才能と関係なく愛されることである。この本が必要な人には手渡してほしい。(赤木かん子 『絵本・子どもの本 総解説第5版』)
テキストファイル化和澤順子