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イギリスで出版と同時に絶賛された動物ファンタジー「ミス・ビアンカ」シリーズの邦訳版が遂に完結した。第一−四巻は、一九六七−七三年に既に邦訳されていたが、その後なぜか中断され、昨年改めて同じ訳者による第一−四巻の改訂版と、新たに訳出された第五巻が出版されていた。 今回出版された第六巻は、初巻で主人公らにくらやみ城から救出された詩人が、科学観測隊に参加し、南極に一人置き去りにされているという設定。それを知ったビアンカとバーナードは、さっそく救出に向かうが、逆に彼ら自身が南極に取り残されてしまう。作品は、彼らがいかにしてそこから脱出するかを起伏ある展開で語る。 第七巻では大使夫人の姪の結婚式前夜、花嫁の付き添い役である花嫁の妹が突然姿を消し、館中大騒ぎとなる。ビアンカとバーナードも危険を冒しながらも彼女の行方を追う。 両作品とも、偶然性を利用した結末には、多少物足りなさを感じるが、それらを差し引いても残る、作品全体の構成力、冒険物語にふさわしいスピーディーで緊迫力のある物語展開、細部にわたる綿密な描写力、魅力ある個性的なキャラクターの創造、随所に見られる諷刺とユーモアなど全巻に共通する特徴は、今回も衰えるどころか、益々輝きを増している。これだけ優れた楽しい作品の邦訳完結が、原作完結以来十五年以上もたってやっとなされたのは、やや遅過ぎる感があるが、まずは全巻が邦訳されたことを、ビアンカを愛する読者として素直に喜びたい。(南部英子)
産経新聞1988/11/05
テキストファイル化 大林えり子
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