みつけよう! 数学!

D・ウェルズ


大橋義房訳・岩波書店 1998


           
         
         
         
         
         
         
     
 「最近の大学生は計算問題をやるのは得意なんだが、数学的センスってやつがないんだ」などという言葉をよくきくが、そんなことをいわれても、「じゃあ、数学的センスってなんだ?」とききかえしたくなるのが人情というもの。そこで岩波書店からでた『みつけよう! 数学!』を紹介してみたい。数学的に考えるとはどういうことなのか、これを読むとほんとうによくわかる。
 日本語のちゃらちゃらした題名にだまされてはいけない。もともとは『隠れた関係、二重の意味−数学の探検』という題名で、ずいぶんと中身の濃い本なのである。しかし安心してほしい。難解な数式も複雑なグラフもでてこない。ちょっとしたパズル感覚の問題を中心に数学的な考え……ピタゴラスの定理、アポロニウスの円、デザルグの定理、四色問題など……が紹介されるという構成になっている。
 序文を引用してみよう。「この本は数学的ななぞなぞを見て、解くことについて書かれたものです……私達の頭は、初めのうちは私達自身がほとんど気がつかないような不思議な方法で、ものごとを理解したり、関係づけたり、度々私達をびっくりさせたりしながら、私達の意識下で働いています」 読みとばせる本ではないが、じっくりつきあうと、なかなか味のあるいい本だということがわかると思う。数学好きにも、数学嫌いにも、ぜひ一読を勧めたい一冊である。(金原瑞人

朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/09/24