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岡田淳さんのファンタジーを読んでいると、つい、模型作りに熱中している男の子の姿が浮かぶ。楽しみながら細部にこだわり、思い通りのものができ上がると、誇らしげに「どう?」と見せてくれる鉛筆の匂いのする男の子。『こそあどの森の物語』も、まさに、「ええやろ。これがぼくの森や」と白い歯を見せている作者の顔が見える気がする。 そう。この話、細部が面白い。『ふしぎな木の実の料理法』は、植物学者の母親が、南の島から送ってきた木の実の料理法が分からなくて、森の住人たちの家を次々訪ね歩く少年のお話。 煮ても焼いてもだめで、塩水に漬けても呪文をかけても何ともならないという不思議な木の実、ポアポア。それを巡って登場する森の住人たちは、それぞれユニークで個性的だが、何となく身近にいそうなキャラクターばかり。 住んでいる家がまたユニークで、作者の細部への、なみなみならないこだわりが楽しめる。 まずは主人公の、シャイで無口な少年スキッパーの住むウニマルという家。ウニそのままに丸い屋根から突き出たとげとげは、ダテじゃない。煙突だったり、望遠鏡だったり、物干しざおだったりと実用性を兼ねている。 湖の中の小さな島に住む双子の少女たちの家は、大きな巻貝みたい。らせん状の階段の踊り場が、それぞれ部屋になっている。 ポットさんとトマトさんの夫婦は、奥さんの方が数倍でかくてキスをするのにも、だんなさんはジャンプをしなくてはならない。この夫婦が住むのは湯沸かしの家。 ほかにも、ガラス瓶の家や、風に飛ばされてきた屋根裏部屋の家など、作者自身による挿し絵で、内部の様子が手に取るように描かれている。眺めているだけでも楽しいが、例えば、明かり取りはどうするのかとか、空気の入れ替えはどうするのかといった実用に関しても、いかにも理屈が通っていて、やっぱり男の人の作った世界だなあと思う。 ついでにいえば、この森に棲息する小動物や植物も、作者が生み出した珍種ばかりだからご注目。『まよなかの魔女の秘密』では、もう少しストーリーはこみいって、魔法の要素が強くなる。行方不明のポットさんを捜すうち、スキッパーは、へんてこなフクロウを見つけて、家につれ帰る。やがて、ポットさんとトマトさんの夫婦に関わる思いがけない秘密が解き明かされる。 三作目がもうすぐ刊行されるようだから、楽しみにしていよう。 (末吉暁子)
MOE95/08
テキストファイル化正木千絵
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