福音館書店
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子供の本の世界ではファン夕ジーは大きなウエイトを占めるが、その分野で「いい仕事してますねえ」とエールを送りたくなるのがこの人、岡田淳さんだ。 岡田さんは小学校の図工の先生である。だから作品には小学校を舞台にしたものが多い。この短編集でも小学校を舞台にして、子供や動物や先生や父兄、給食のおばさんといった実にさまざまな登場人物がふしぎなドラマをくりひろげる。 例えば、ある種の超能力を手に入れたと思い込んだ少年が、頭に来た級友を、石ころになってしまえと念じる。するとその級友は行方不明になり机の中には石ころが…という話。また、給食室に行く途中で出あったねずみに、給食のおばさんたちは魔女なのだと教えられ、いってみると、本当に三人の魔女がジャンケンをしているという話。実によくできている。うそだとわかっていながら、腕のいいマジシャンの魔法に酔いしれる心地よさだ。 何と言っても、学校生活の細部にリアリティーがあるのだ。このリアリティーは、特にファン夕ジーでは物語が無理なく進行するためには必要不可欠のものだから、岡田さんが小学佼の先生だってことは、実に強みなのだ。いや、そうともいえないかも。だって、日常生活に埋没していると、却って周りの細かいところは見えなくなってしまうことの方が多いから・・。やはり、岡田さんは稀有な才能を持っているのだ。 そういえば岡田さんは、雑誌「鬼ヶ島通信」の中で子供の本のおもしろさについて、こんなことをいっている。「どうして子供の本なのか。子供ということと、おもしろさの関わるところはどこか。そう考えると不思議さ、ということがまずあるのではないかと思います。」同感。 岡田さんの強みはまだある。絵も描けるってこと。図工の先生だからあたりまえか。本書でも、一つ一つのエピソードの間をコマ割風な絵がつないでいて、それが重要な結末を引き出したりするのだ。ぜひ、じっくり味わってほしい。 『ねこが見た話』の作者、たかどのほうこさんは比較的新しい書き手だが、やはりユニークなファンタジーを書き続けている人だ。ここには、語り手であるのら猫がのぞき見たご近所の家の不思議な話が4編。 ホラーめいた話あり、ナンセンシカルな話があったりと、それぞれティストは異なるものの、どれもユニークでやや不気味。もっともこの短編集、挿絵によっては全然違う雰囲気になったかもしれない。(末吉暁子)
MOE1998/11
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