もうだいじょうぶ!の本

スージ・ベッカー

落合恵子訳 飛鳥新社 1994

           
         
         
         
         
         
         
     
 大事なことはみーんな猫におそわって、そのまんまのタイトルてべストセラーを作った、あのスージー・べッカーが、また楽しい本を出した.。
題して『もうだいじょうぶ!の本』。こんどは猫じゃなくて、子ども達から教わったんだって。
そう。大人って、ほんとにややこしい。一生懸命やればやるほど、人間関係やら何やらが、こんがらがった毛糸玉みたいにぐちゃぐちゃになっちゃうし、暮しも便利になればなるほど、意外なところで落とし穴に落っこっちゃったりするのよね。
そんなとき、問題を解決してくれるのは、政治家でもなきゃ、学者でもない。お金でもなけれぱ、経験でもない。
ぬくぬくとひなたぼっこしながら、大あくびをしている猫を見て、「そうよ。この猫みたいに、ただ純粋に無目的に自分勝手にしていれば、何も問題はないんだわ。」と、突然悟りを開いたりするものなのである。
猫や犬からだけじゃない。子ども達からだって、教わることは山ほどある。
小学校で創作クラスの先生をしているという著者は、きっと子ども達と触れあうたびに自分の方が学んでいるんだろうと思う。
私だってそうだった。子育てというのは、自分自身が子どもから学んで大人になることなのだから…。今だって子ども達から来るゆかいなお便りは、限りなく創作のヒントを与えてくれる。
だから何か悩み事がある人。この本を読めば、もうだいじょうぶ。
どうしようもなく落ち込んでしまったときには、「枕元に目覚し時計を置くのよ。朝、目を覚ましたとき、とっても素敵な事をささやきかけてくれるわ。」と教えてもらえるし、ダィエットに失敗したときには、「疲れても眠くなっても、クタクタになっても、勝手に走り続けてくれる運動靴をはいたら?」とアドバイスもしてもらえる。
地球のオゾンホールの問題に頭を悩ましている科学者には、「穴にゴミを入れてその上に種をまき、花を育てるのよ。」と教えてあげたいし、登校拒否の生徒が増えて困っている学校の校長先生には、「学校の噴水をチョコレートミルク入りにすべき。」と教えてあげたくなっちゃう。
どーんな悩み事だって、ドーンとこいよ。
病気の人にだって、ハートの破れた人にだって、髪の毛の薄くなったオジサンにだって、シワの増えたのを気にしているオバサンにだって、子ども達はアッと驚くような素晴らしいアィディアをさずけてくれる事、うけあい。(末吉暁子)
MOE1994/05