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日本中どこに行っても都市化が進み、昆虫なんて図鑑でしか見ることができなくなったと、したり顔でいう人がいる。都会では昆虫採集なんてできないと思い込んでいる人も少なくない。 ところがどっこい、虫はどこにでもいる。東京のどまん中にだって、チョウもセミもいる。公園や草むらなど、植物の多いところや花の咲くところを、ちょっと注意深く探せば、いくらでも虫を見つけることができるのだ。虫がいなくなったのではなく、それを探す心が失われていると言った方がいいのだろうか。 この本は、「虫の飼い方・観察のしかた」シリーズの最初の一冊。まず、近所の虫の探し方から始まる。季節の変化に合わせて、家の近所でどうやって虫を見つけるかが、じつに丁寧に紹介されていて心憎いばかりだ。実際に住宅地で、こんなにたくさんの虫に出会えるかと思うと、ワクワクしてくる。そして、雑木林の虫探し、水辺の虫探しと発展する。 そうやって見つけた三百種近くの昆虫の生態写真と図鑑写真がびっしりと掲載されていて、それが圧巻である。白地に薄い影を落としたカラフルで鮮明な虫たちの写真は、まるでガラスの細工物のように美しい。身近な自然と小さな生命に触れ、自然の豊かさと不思議に出会うための、わかりやすくて楽しい写真絵本でありガイドブックでもある。(野上暁)
産経新聞 1998/04/13
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