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まず、これは子どものための本です。 ですからこれを読んでもらって、共感する子ども、のめり込める子どもはきっといるでしょう。 でも全然別の方向から、これは大人が読んでも身につまされる、というか、胸のつまる物語です。 秋休みの最初の朝、うんと早く起きて散歩に出かけたパウルは、赤レンガのアパートのてっぺんの煙突から海賊の帽子をかぶった子が頭を出したのを見てびっくリします。 なぜってそのアパートは取り壊す予定で、もう誰も住んでいるはずはなかったから……。 そうしておっかなびっくリ探険に行ったパウルは、そこで同じくらいの年齢の男の子に捕まります。 彼は、自分は海賊の頭で、いまは大航海に出る準備をしているところだと言い、ありがたくもパウルを一の子分にしてくれる、というんだね。 もともとロマンチックで空想好きだったパウルは、この〃海賊ごっこ〃に いともたやすくはまってしまい、親分が次々に出す難問……食べ物を持ってこいだの、ボクシング・グローブを手に入れろだの、オウムを連れてこいだのを必死に頭を使ってクリアします。 もちろん大人の読者にとっては、彼は家出少年だってことはバレバレですが、なぜこの子がそうしたかを考えると……この切なさはやはり現代のものなのかもしれません。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート1』
(リブリオ出版 1997/09/20) |
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