徳間のゴホン!第30回「長〜い、夏休み」


           
         
         
         
         
         
         
    


 国外に脱出するのが私の夏休み! という方や、野山にでかけて、のびのび遊ばなくちゃ、という方、海で泳ぐのが一番! などなど、いろいろいらっしゃることでしょうが、やっぱり夏は、外!
 スーツケース持って飛行機に乗るのもよし、テントを担いで山に行くのもよし、民宿に泊まって、海水浴をするのもよし! いずれにしろ、お休みは楽しいものです。
 まずは、『ようこそ森へ』から。高原の森にやってきた親子連れ。テントを張って数日間のキャンプです。お母さんは野草を摘み、お父さんは魚釣り、そしてボクは虫を追いかける毎日!「なかなかいいところだろ?」その森に住むカケスが声をかけます。本をひらくと、林間をわたる涼しげな風が感じられるキャンプ絵本の定番です。
『青いヤドカリ』は、泳ぎたいけど、海に入るのがこわい男の子のお話。水際で躊躇している男の子に、磯のタコがおまじないに青い巻き貝をくれました。そして、そのタコに誘われ、勇気を出して水にもぐってみると、そこには、素晴らしい世界が広がっていて…。青く深く美しい海の魅力と、勇気をもらった少年の成長を描いた一冊。ページをめくると、自分まで波にゆられているような気分になってくる絵本です。
 『はるかな湖』は、両親が離婚して普段は一緒に暮らしていない少年とお父さんが主人公。仕事ばかりしていたお父さんがキャンプに連れていってくれるのですが、その場所は、山奥の、人が誰も来ない湖。美しい自然を目の前にし、無口な父と内気な息子の心がつながります。自分だけの湖を探しにいってみたくなる…そんな一冊です。
 夏休みになると、最低でも二週間から三週間のバカンスを楽しむヨーロッパの人々。そんな夏の経験を描いた本を二冊ばかり。『すももの夏』は、バカンスに来たのはいいけれどお母さんが病気になり、子どもだけでホテル暮らしをすることになった主人公たちが、大人の世界をかいま見、とんでもない事件に巻き込まれていくという、ロマンスとミステリーに彩られた読み応えのある作品。一方『ロビンソンの島、ひみつの島』は、休暇先まで仕事を持ち込む両親が罪滅ぼしに買ってくれたボートで、湖に浮かぶ無人島に出かけた男の子の冒険、初恋、そして友情を描きます。
 長くて自由な時間がたっぷりある夏。いずれも、いろんな出会い、経験を通して、子どもたちがすくすくと成長していく姿を描いた、夏こそぜひ手にとっていただきたい作品たちです。(米田佳代子)

絵本
『ようこそ森へ』村上康成作
『青いヤドカリ』村上康成作
『はるかな湖』アレン・セイ作・絵/椎名誠訳
児童文学
『すももの夏』ルーマー・ゴッデン作/野口絵美訳
『ロビンソンの島、ひみつの島』クラウス・コルドン作/ダグマール・ガイスラー挿絵/本田雅也訳
テキスト化富田真珠子