ユーリアの日記

クリスティーネ・ネストリンガー 作
松島 富美代 訳 ほるぷ出版 1995.7

           
         
         
         
         
         
         
     
 現代の子どもたちは病んでいる、と言われている。いじめ、登校拒否、家庭の崩壊、挙げ始めるときりのない様々な問題を抱え、子どもらしい子ども時代が送れないでいる。
 しかし、やっぱり十代っていい!とこの作品は痛感させてくれた。
 ユーリアは、ママと二人暮らしだ。パパとは週末に会うことになっているが、女たらしのパパは時間に遅れたり、約束をやぶったりする。でもユーリアがかけがいのない存在であることを、彼女の両親は示し続けている。ユーリアの誕生日にはみんなそろって集まり、日頃のごだごた(パパが養育費を滞納していることなど)は口に出さず、できる限リユーリアを喜ばそうとする。
 ユーリアが抱えているのは、家庭内の問題だけではない。将来を大きく左右する成績も深刻な悩みだ。ユーリアの近所の子は成績を嘆き自殺しようとした。ユーリアだってケガをして、少し歩いただけでも激痛があるのに学校へ行こうとしていた。
 そうしたプレッシャーはあるが、ユーリアはうじうじしたり閉じこもったりせず、青春を思う存分楽しんでいる。ファッション、友情そして恋。通学電車で会う素敵な男の子にユーリアは恋している。名前も知らない相手だったけど、彼の友だちが話しかけてきて彼と知合うことができる。最初は彼とは仲良くなれず、その友だちと親しくなる。でも徐々に彼、シュテファンと恋人同志になっていくユーリアは恋愛に夢中になり幸せをかみしめる。でも、隣に住む人がママに彼らが行き過ぎた交際をしていると告げ口したり、大胆なユーリアにシュテファンが尻込みしてしまったりと、なかなかスムーズにはいかない。
 そんな生活を送るユーリアから、問題を抱えながらも、生き生きと楽しい生活が送れるのだという著者のメッセージを感じた。(石川 喜子
読書会てつぼう:発行 1996/09/19