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文字のない絵本を二冊ご紹介しましょう。 「ゆきだるま」はアニメーションでごらんになった方も多いと思いますが、もともとは、文字のない絵本として出版されました。アニメの冒頭で作者ブリッグズが「ある朝目が覚めたら、一面の雪で部屋の中まで輝いて見えた。まるで魔法に包まれているような朝だった。その日、この絵本は出来たのです」と語っていますが、まさに、この絵本は、神秘的とまでい えるようなすぐれたファンタジーに満ちています。大雪が降った日、自分の作った雪だるまを庭に残して家に入る少年。 けれど、真夜中、少年が目を覚ますと、雪だるまが動きだし、少年を冒険 へといざないます。台所の探検、寝ている両親の部屋でのいたずら、車の運転、そして凍てつく冬の空を飛び……。二人の楽しそうな笑い声が聞こえてくるようです。けれども、真冬の夜の夢にふさわしい心躍る出来事の後、翌朝少年が庭で見たのは……。切ないラストではありますが、このエンディングのおかげで、この物語がいっそう心に残るのだと思います。 もう一冊は「ちいさな天使と兵隊さん」。人間の女の子が寝ている 間に、人形たちが繰り広げるドラマが描かれます。ある晩海賊の人形が女の子の貯金箱からコインを盗み出すのを見つけた兵隊のお人形は、コインを取り戻そうと一人海賊に立ち向かいますが、逆に捕まってしまいます。天使の人形は、兵隊人形を助けようと、海賊船に乗り込んで・…。「お人形は、本当 は生きている。人間が寝ている時だけ動いているんだ」という、お人形物語の法則に従って描かれていますが、ここには、人形達の人間に対する忠誠心、人形達同士の友情、そして知恵もさ りげなく描かれ、何度ぺージをめくっても飽きの来ない絵本です。 文字のない絵本は、読んであげるのがむずかしいとか、自分で創作しなければならないからめんどくさいという声も聞きますが、子どもは大人よりも「絵を読む」のが上手です。絵の中に描いてある事を紡いで、自分でお話を作っていきます。頭で考えるのではなく、目で見たとおりに受けとめて、子どもと一緒に物語を楽しんでみてはいかがですか?(米田佳代子)
徳間書店 子どもの本だより「絵本っておもしろい」1995/11,12
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