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1月の新刊でアストリッド・リンドグレーンの作品『雪の森のリサベット』を刊行します。リンドグレーンが亡くなったのは昨年1月28日。ちょうど一年が経とうとしている時に刊行が重なるとは、思いがけないことです。 リンドグレーンといえば『やかまし村』『ピッピ』など、元気なお話が世界中で人気ですが、それとはまた別に、貧しかったり不遇な生まれだったりする子どもたちを主人公にした淋しく美しい作風のファンタジックな物語群があります。徳間書店の絵本でも、そうしたリンドグレーン作品を読むことができます。 『夕あかりの国』は、もう歩けないとわかったぼくが出会った不思議の物語。暮れていく部屋の中で、もう絶対歩けるようにはならないのか、とぼくが考えていると窓辺に小さなおじさんが現れ、「夕あかりの国に行ってみないか?」と尋ねます。「どこへもいけないんです。足が悪くて」と答えるぼくに、おじさんは「そんなこと平気だよ。夕あかりの国ではなんでもないんだ」と言い、二人は空を飛んで夕あかりの国へ…。 『よろこびの木』は、病気で両親を亡くし、病気を恐れた村の人からは引き取ってもらえず、貧しい人や働けないお年奇りが募らす小屋に住むことになった少女の物語。美しいものも楽しいものもなんにもない、あまりにも虚しい小屋での暮らし。よりどころを求めてやまない少女の気持ちが、奇跡を生み…? 今は世の中全体が貧しかった時代とは違いますし、治る病気も多くなりました。でも時代は変わっても、人の心に「悲しみ」があることは変わりません。 殊に言葉足らずな子どもの時期には、自分の心の内の悲しみに気づくことが難しいように思います。少なからず悲しみを持った読者は、主人公に感情移入し、リンドグレーンが主人公に向けた愛情に満ちた眼差しを一緒になって受けとめ、はっとさせられるのでしょう。 愛情というのは、やはり与えられて知るもの。誰かが心底自分の身を案じてくれた経験は、慰めとなると同時に、生きる力を与えるものであると私は思います。 悲しみの元となる、自分一人ではどうにもしようがない環境や世の中。新しい時代には新しい悲しみの元が生まれています。一人の小さな人間の悲しみを照らしだすリンドグレーンの物語を必要としている子は、時代が移り変わった今も、同じようにあちこちにいるように思います。そして、その数は案外多いのではないでしょうか? もう一度の方も、初めての方も、子どもたちも、この機会にぜひ作品を手にとってみてください。 絵本 『夕あかりの国』アストリッド・リンドグレーン作/マリット・テルンクヴィスト絵/石井登志子訳 『よろこびの木』アストリンド・リンドグレーン作/スヴェン・オットー・S絵/石井登志子訳 徳間書店「子どもの本だより」2003年1-2月号 より テキストファイル化富田真珠子 |
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