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ついに、日常感覚で人類の滅亡について考える時代がやってきてしまった。このエッセー集『ライオンの昼寝』(山川健一著、実業之日本社・1100円)を読んで、つくづくそう思う。 これは、今後もずっと存続できるかどうかだいぶあやしくなってしまったヒトという種について、あかるく楽しくシリアスに考えた本。 ほかのすべての動物が、環境への適応をテーマに進化してきたのに、人間だけは、環境のほうを人間にあわせて変えてしまう。また進化の過程で発情期を失った結果、人間ときたら年中発情している。 この本当にヘンな動物、人間について、著者はあれこれ思いをめぐらせる。動物園でごろごろしているライオンをながめながら、チンパンジーになりきって部屋の中を跳びはねながら、乳牛になったつもりでモーツアルトをききながら。 このなにげないスタンスがいい。地球環境の危機とか、あんまり正面きって言われるとつい、またか、と思ってしまう昨今だから。 それにしても、昔に比べ男の精子数が減ってきたというデータなど、人間の種としての退行が進行している、と言われると、ため息が出る。本書でも紹介されているドードー(『不思議の国のアリス』でおなじみの鳥)などの絶滅動物が最近はやるのも、人類が彼らに寄せるひそかな親近感のあらわれかも。(芹沢清実)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1991/09/08
テキストファイル化 妹尾良子
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