ライオンが学校へやってきた

フィリパ・ピアス・作
高杉一郎・訳 キャロライン・シャープ・絵 岩波書店

           
         
         
         
         
         
         
    
    
 楽しいお話が九つ。
 学校に行くのをいやがる小さな女の子が、しぶしぶ登校する途中、ライオンに会いました。「ぼくを学校へつれていって」「約束するならいいわ。だれも食べないって。ぜったいによ」。そこで女の子はライオンに乗って学校へ行きました。休み時間に、今日も一番大すきな男の子が近づいて来ました……。
 どのクラスにも、特別体の小さな子が一人や二人います。そうした子たちにとって、体の大きな子に交じって学校生活を送ることは、なかなか大変なことなのです。とかくいじめられっ子になりがちな小さな子に、声援を送る作者の声が聞こえて来るような表題作です。
 せっかく買ってきたねずみ取り器が、ちょっと置いたテーブルの上から消えてお父さんは怒るやら首をひねるやら。楽しい休暇中、貸別荘で出合った一匹のねずみに寄せるアンディの友情を描いた「ねずみごろし」。ジューディの小指がむずむずして、曲げると欲しい物がなんでも飛んでくる「ジューディの小指」など、どれも子どもの目の高さで書かれているのが、この本の魅力のもとでしょう。
 作者は子どもの行動や心の葛藤(かっとう)に温かな目を注ぎ、平凡な日常の中に、独特の不思議な世界を描いてきました。長く絶版だった「まぼろしの小さな犬」も、岩波から再版されました。(和)=静岡子どもの本を読む会
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