ライオンくんを ごしょうたい

角野栄子

偕成社 1995


           
         
         
         
         
         
         
         
     
 こんなことが本当にあったらいいなあとか、できたらいいなあと思わせるのもまた、幼い子どもたちの夢の容器でもある、お話の世界のたまらない楽しみであろう。「ぼくの まちに、とっても すてきな きまりができた。どうぶつえんの どうぶつに、つきに いちど、とまりにきて もらっても いいことになったのだ」という、なんとも魅力的な書き出しで、このお話は始まる。そこでぼくは妹と相談して、ライオンくんをご招待する。お昼ごはんはカレーライス。ライオンくんは、「げきからで おねがいします」なんて言うから、ぼくは「さすがー」って思う。ライオンくんは、とてもお行儀がいい。それから、にらめっこをして遊ぶ。ぼくも妹も、必死でにらむ。ライオンくんも、負けずにギラギラにらむ。もう笑いそうになるのをこらえていると、「こわいよう」と、突然ライオンくんが大声を上げて泣き出してしまった。一緒に歌をうたったり、絵を描いたり、お風呂に入ったり、ぼくと妹のベッドをくっつけて、ライオンくんと一緒に寝たり。ぼくたちとライオンくんの、夢のようなすてきな一日がユーモラスに描かれて、それが楽しい。
 読んでも聞いても歯切れのいい文体と、幼い子どもの微妙な気分の移ろいを上手にとらえた展開が、不思議な心地好さを醸し出している。(野上暁
産経新聞、1996年1月12日号