ラムラム王

武井武雄


銀貨社


           
         
         
         
         
         
         
     
 ラムラム王は東京から九万マイル、ロンドンから九万マイルのエッペ国という国の貧乏な珊瑚削りの仕事場で生まれた子。七歳にして変身の術を現わし、鳥や虫に自在に変身、魔法を使って両親を驚かせ、やがて魔物の故郷目指して旅に出る……。
ご存じ武井武雄のナンセンスワールド、微細な線画とともにとくとご堪能あれ。これは大正十五年に刊行された武井童話の復刊。文字づかいは読みやすいよう今風に変えられているが挿絵は当時のまま、装幀や字配りも大正ルネッサンスの雰囲気をよく表わしている。武井武雄は挿絵、版画、本作りに異才を発揮した作家として知られるが、「童画」という言葉を作り、その世界を確立した人でもある。ラムラム王は児童雑誌「金の星」連載のほか刊本作品にも登場するキャラクターで、武井は「私はラムラム王の生れ変りだ」と常々口にしていたという。

季刊「銀花」1998年春号 文化出版局