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この九郎の動きが、ストーリーの軸となっている。一方、城も領地も失った狛秀は、南山城の国人たちの結束と合議による治国を夢見て、行脚を続ける。 この小説は、応仁の乱終結の十六年後から語りおこし、名目ばかりとなった足利幕府のもとで、幕府方の畠山政長と畠山義就が争い、長く居座る彼らを民衆が「長陣迷惑」として追い払い、八年間続く南山城惣国を樹立するまでの物語である。 一時的だが守護大名のいなくなった国を素材にしたこと自体に、著者の意図が明りょうに見て取れる。こうした作品は、えてして類型的なパターンにおちいるか、教科書的退屈そのものになる嫌いがある。この作品は、歴史ロマンスの要素はあっても、それにのめりこまず、史実は語られていても、物語の興味をそがないように抑制されている。そのために、歴史のうねりが大きく再現される。 質の高い歴史物語である。(神宮輝夫)
産経新聞 1997/11/18
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