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『そばかすの少年』につづくリンバロストもの第二部『リンバロストの乙女』はそばかすが残していった昆虫の標本箱をもらった気丈な女の子が、沼で集めた珍しい昆虫を売って必死にがんばって高校に行くお話ですが、こちらはなんと、児童虐待がテーマです。 彼女のお母さんはね、最愛の夫が沼でおぼれて死んだ、それを助けられなかった痛みから立ち上がれなくて、娘をずっといじめつづけるんだよ。 わざと冷たい言葉しかいわなかったり、学校へ行くのに着ていったら絶対笑われるような服をわざわざ用意したりしてね。 でも本当に愛してないわけじゃない……お母さんはもだえ苦しんでるんだ、ということは娘にはありありと伝わりますから、彼女は必死で、時にはあんまりひどいわ、と泣きながらも母親を責めたりせずにがんばるわけです。 ジーン・ポーターは博物学者で、十九世紀に女性で博物学をやってる人なんてまずいなかったでしょうから、よっぽど頭の切れる自立したタフな女性だったんだと思いますが(あとダンナが良かった、といわれてるね。危ないとこへは一緒に行ったとか……)、この二冊にもリンバロスト、という独特の沼地の植物と昆虫がたくさん出てきて、それも力強い魅力の一つになってます。 ヒロインは沼で蝶や蛾をとって女性博物学者(作者自身でしょう)に売って学費を稼ぎますが、近くの子のない中年の夫婦がなにくれとなく面倒をみてかばってくれたり、理屈は知らなかったろうに、今読んでもことごとくそのとおり……百年以上も前の本とはとても思えないできばえです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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