リネア モネの庭で

クリスチィーナ・ビョルク

福井美津子訳 世界文化社 1994

           
         
         
         
         
         
         
         
    
仲良しの女性二人の共同生活から生れた「スウェーデン暮しの歳時記」。案内役のリネアという女の子は、作者二人の分身なんだろう。実際に会ったら、きっとそばかすだらけにちがいない。愛すべきキャラク夕ーだ。
リネアの先生役を務めるのが庭師のブルームさん。このおじさんは実に何てもよく知っていて、いろんなところヘリネアを連れていってくれるのだ。
そう。一冊目の『モネの庭で』で、実際にモネの絵を見に、パリまて連れていってくれたのはこの人。
絵本をめくるように、リネアの旅立ちやホテルでの小さな出来事などを楽しんで読むうち、読者である私たちもいつのまにかドキドキしながら、憧れのモネの絵の前に立っている。ついでに美術館の庭に咲く花まで堪能し、川のほとりでお弁当を広げてピクニックまでも…。絵と文と写真とコラージュとがごった混ぜになった、なんともよくばりな、ジャンルを越えた不思議な造りの本だ。それも、テレビの子供番組のアニメがヒットしたのて、出版化したのだと聞けぱ納得がいく。
四季折り折りの自然を楽しむためのほんのちょっとしたア4デアを教えてくれるのが『リネアの12ヶ月」だ。
二人の作者は、今ストックホルム市内にある素敵な田舎家で暮しているそうだから、ここに出てくる小動物や植物は、毎日の暮しの中で身近に触れているものばかりなのだろう。
例えば、都会で小鳥たちのためにレストランを開く方法。お菓子の缶のふたにジャングルを作る方法。押し葉や押し花の作り方。ニワトコの花のジュースやイラクサのスーアの作り方。カエデの冠やタンポポの花輪の作り方。
そういえぱ日本にもあったよね。子供のとき、白つめ草の花で輪を作ったりしたっけ。もともと日本人は、自然を愛し、自然と折りあって暮すのが上手な人種のはずなんだもの。もちろんこの手の本は日本にもたくさんある。
でも、この「リネア」シリーズのいいところは、あくまでアマチュアっぽいこと。決して小粋になったり、お洒落になったり、ゴージャスになったりしないで、どこまでも素朴でつつましくて、押し付けがましくないこと。
多分それは、もともと一緒に女性雑誌のグラフィックデザイナーをしていたという二人の著者が、自分たちの感性に合う物と合わない物を、厳密に取捨選択しているからなのだろう。どのぺージも、キメ細かなレイアウトで、一冊の本を作る喜びがあふれている。
シリーズ三冊目の「窓辺の花」が、もうすぐ出るそうなので楽しみだ。(末吉暁子)
MOE94/08