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今回はこれであります。 一九六〇年代、アメリカの多くの若者たちは、「愛と平和と平等」を合言葉に、あらゆる価値観の見直しを試み、社会から抑圧されている人々すべての解放を夢みて、反戦運動や黒人解放運動など様々な運動に参加した。そして六九年ウッドストックで三日間にわたって催されたロック・フェスティバルはその象徴的な事件だった。 この時代を原点として生き、活動している作者は現代をみてこう書く。「アンスラックスの『ローン・ジャスティス』という曲の視点、大多数の若者がレーガン支持であるという事実を知った時、私は時計の振り子が、ウッドストック時代の理想や価値観から、まったく反対の極に動いたことを思い知らされた」 この大きな変化を、若者文化、とくにロックを中心にすえて、考えていこうというのがこの本の目的であり、六〇年代のストーンズから現代のメタリカまで、多種多様なロッカーの歌詞が効果的に使われている。 「音楽が社会的パワーを持ち得ると信じるなんてナイーヴだ、オプティミスティックすぎると言う人がいたら、その言葉は素直に受けとる。しかし、ペシミスティックに物知り顔するよりは、いつまでもオプティミスティックでナイーヴでいたいと思う」という作者の言葉には力強い響きがある。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席89/10/08
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