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一九六0年代から七0年代というのは、文学や音楽、演劇など、様々のジャンルであらゆる試みがなされ、新しいものが続々と生まれた時代だが、このとき誕生したロックほど、この時代をあざやかに反映したものはなかったように思える。ロックは強烈に、ときには傲慢(ごうまん)なほどに自分を主張しながら多くのものを貪欲(どんよく)に取りいれて急成長し、ほかのジャンルを切り崩してきた。ロックぬきでこの時代を語ることはできないのではないか。 いま『ロック/ザ・ディスコグラフィー』をながめながら、そんなことを考えている。この本には、六0年代から八0年代までのロックの名盤二千枚が、ミュージシャン別に、ジャケットの写真と短い解説つきで紹介されており、六0年代の米英については小倉エージと伊藤政則が、七0年代の米英については天辰保文と大貫憲章が、八0年代は米英その他あわせて山田道成が、それぞれ簡潔にその歴史をまとめている。 六二年から現在にいたるまでのボブ・ディランの顔の変遷をジャケットでたどったり、好きなミュージシャンの知らなかったアルバムを発見したりという楽しみもあるし、また、日常に慣れきった自分に活をいれ、この壮大な流れのなかから自分自身の物語をつむいでみるのもいいかもしれない。 おじさんも若者も、ロックファンなら必携の一冊。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席 1988/05/29
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