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何度読み返してみても、いつも泣いてしまう、私の数少ない本の一つです。 舞台はブラジル……五歳のゼゼはもうすでに、うちひしがれています。 親きょうだいに愛されていないわけではないのですが、まず貧困で……。 父ちゃんは家族を養えない絶望感で胸が張り裂けるような思いをしていて、親が幸福でないということが、自分が親を幸福にできないということが、感受性の鋭い頭の良いゼゼを返す刀で切りつけるのです。 それともう一つは、彼は頭が良すぎる……その知的好奇心を満たすだけの刺激がお金のない彼らには受けられない……。 いくら可愛がってもらっても、彼はその占ぞは飢えた子どもで、息ができなくて苦しがります。 勉強したくないのにさせられても、能力以上のことをつめこまれても人間の子どもはぶっ壊れるし、足りなくっても飢えてやせ細るのよ。 て、ゼゼはそれこそ命がけでその自分の欲求を満たしてくれる人を探し、町ではエリートの教養のあるお金持ち、一人ぼっちの異邦人のポルさん(ポルトガル人なのでそうよばれている)を勝手に自分のお父さんにし、必死につきまとい、慕い、ポルさんはとうとう根負けしてお父さんをやる羽目になる・・・・・・。 彼は自分の父ちゃんも大好きだけど、でもポルさんのように彼のことを〃わかって〃はくれないのが苦しいんだよね。 これは心情的には、ほぼ作者のヴァスコンセロス氏のものでしょう。ゼゼは大きくなって……作家になったのです。(赤木かん子)
『かんこのミニミニ ヤング・アダルト入門 図書館員のカキノタネ パート2』
(リブリオ出版 1998/09/14) |
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