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楠かつのりの『ビデオムービーの達人』(平凡社・一二六二円)というビデオムービーの楽しみかたを紹介した本のなかにこんな文章がある。「新しい見方の発見が自分を何度でも新鮮に刺激してくれるものをアートと呼ぶことにしている」。これを読んで、そうだそうだ、南伸坊の『笑う写真』はやはりア・トだったんだと納得してしまった。むつかしい本かって? いや、あほらしい本です。と同時に驚異に満ちた写真論でもあります。 でかいでかいといわれている南伸坊の顔がどれくらいでかいのかを写真で比較したり、妙に似ているふたりの写真(たとえば薬師丸ひろ子と小錦、小林旭と桜田淳子)を並べてみたり、ばからしいほど楽しい本です。とくに最後の章はすごい、「写真というのは同一人物でありながら、時として全くの別人のようにも写ってしまうものである。であるならば別人であっても、まるで同一人物のように写す、ということもまた可能であるはず」という信念にもとづいた作者の「似せ顔」の数々、これは笑えます。王貞治、北島三郎まではわかる。沢田研二、中曽根康弘、いや、これくらいもまだいいことにしよう。しかし中山美穂、工藤静香にまで扮してしまうというすごさ。写真の可能性をここまで追求した本がかつてあっただろうか! 笑いながら考えながら笑いたい人にぜひ。(金原瑞人)
朝日新聞 ヤングアダルト招待席900401
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