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エルザ・べスコフ(1874〜1953)と同じスウェーデンの画家で、べスコフにも大きな影響を与えた画家にカール・ラーション(1853〜1919)がいます。ラーションは、祖国スウェーデンの風俗と歴史、そして家族の営みを愛情込めて描き、国民画家として親しまれている人。貧しい家庭に生まれ、その才能を認められて懸命に絵を勉強し、画家として大成したという彼の生涯は、まるで小説のようですが、何より、その誠実で気品に満ちた作品ゆえ に、今日でも世界で愛されているといえます。 そんなラーションの展覧会が、五年ほど前に宋京都の庭園美術館で開かれ、現在スウェーデン国立美術館に所蔵されている絵本『わたしの家』の原画も10点展示されていて、狂喜したものです。スウェーデンの地方の村スンドボーンに暮らすラーション一家、画家と妻と六人の子どもたちの生活を記録したこの絵本は、何よりもラーンョンの本質を伝える仕事。制作のきっかけが振るっていて、とある雨の日、降りつづく雨に屋外で絵が描けず、すっかり苛立っている画家に、妻のカリーンがやさしくアドバイスします。外で絵が描 けないのなら、この季節は家族の記録として自分の愛するスンドボーンの家のすべての部屋を描くのはどうかと。こうしてラーションは、居間や寝室や食堂の様子から、夏の川でのザリガニ採りや冬のソリ遊び等々を、妻や子どもたちの姿とともに描きました。その作品にラーション自身が各場面を説明する文章を付けて画集として出版されたのが、1899年。それが大変な好評を得て、後に説明文を長女スザンヌが語る言葉として書き直し、絵本として出版されて、今日に至りました。 その絵を見ると、質素だけれど細部まで手入れの行き届いた上質の暮らしぶりと、親子の愛情に満ちた関わりを読みとることができます。例えば、アメリカの画家ノーマン・ロックウェルの作品に比べると、決してドラマティックではないけれど、ごく日常的な川々の暮らしの、場面に、真面目で温かく心豊かな家族の姿が感じられるのです。絵本が何を描くか、読み手は何を受けとめていくか、そのひとつの答えがこの絵本にはあるような気がします。 日本では、現在、残念ながら絶版の『わたしの家』 (1985年に講談社から刊行)。復刊は心から望まれるところです。(竹迫祐子)
徳間書店 子どもの本だより
「絵本、むかしも、いまも・・・ 第12回「画家を育んだ祖国の暮らし/力ール・ラーション」1999.06 |
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