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久々のセンダックの新刊だ。「ふたつでひとつのマザーグースえほん」とサブタイトルにあるように、マザーグースの二つの唄をつなぎ、大都会の片隅に暮らすホームレスたちを登場させて、特異な世界のざわめきを生き生きと魅力的に描く。 夜のホームレスのたまり場に、二匹の巨大な悪者ネズミが現れて、かわいそうな小さな男の子とたくさんの子猫たちをさらっていく。ジャックとガイは、彼らを取り戻そうとネズミたちとトランプの勝負をするが負けてしまい、男の子と子猫たちは連れ去られる。その様子をじっと見ていた月が、ジャックとガイを大きな口にくわえてライ麦畑に放り出すと、そこにさらわれた男の子がいる。そして月は、いつのまにか大きな白い猫になって、悪者ネズミを退治し、ジャックとガイは男の子を二人で育てることにする。 横長の画面いっぱいに、段ボールから顔だけ出したり、新聞紙にくるまったり、ぼろきれを纏(まと)ったりしたユニークなキャラクターが次々と登場し、まるでにぎやかな芝居を見ているかのように場面が展開する。画面ごとにさまざまに表情を変え、ついには巨大な白猫に変身する月の存在が、物語を象徴的に印象づける。これは、センダックの子どもの権利宣言であり、人権宣言でもある。挟み込みのしおりの訳者解説はじつに周到で、教えられるものがたくさんある。 (野上暁)
産経新聞 1997/12/27
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