わたしのペットは鼻づらルーディ

ウーヴェ・ティム

平野卿子訳 講談社

           
         
         
         
         
         
         
         
    
 日本は今、空前のペットブームだとか。スーパーマーケットのペットフードの棚を見るたびに、マンション暮らしの隠れ飼い主の皆様方のご苦労に思いをはせる今日このごろです。
 ドイツのウーヴェ・ティムという人が書いた『わたしのペットは鼻づらルーディ』(平野卿子訳 講談社)という本にも、そういう苦労話がでてきます。といっても、主人公である一四歳の「ぼく」が住んでるマンションは、ペット禁止ではない。問題は、ルーディが果たしてペットと言えるだろうかってこと。だって、ルーディってブタだもん。
 このルーディ、頭は良いし性格はかわいいし、泥棒も追っ払えば火の用心の役にも立つという立派な名豚ですが、ブタに対する世間の偏見は根強く、「ぼく」一家はついに引っ越しを余儀なくされます。「ぼく」のパパは古代エジプトを研究する学者さんですが、もっか失業中。学校の先生をしているママが、「ぼく」と二人の妹を含めた五人の暮らしを支える貧乏一家としては、引っ越しは痛い。 ルーディの大活躍には爆笑、一家のチームワークにはしんみり、というぜいたくな一冊です。(横川寿美子
読売新聞 1991/09