98年ゲームベスト10
元々の依頼はゲームソフトベスト10だったのだが、1位はアニメにした。ポケモン自体が元々ゲームだからということもあるが、それよりなにより、今年、子どもたちに圧倒的に支持されたのが、これだったからである。夏休みの映画界を圧勝するとみられていた「GODZILLA」が伸び悩む中、なんとその2倍、60億の興行収益を挙げた。昨年の「もののけ姫」には及ばないものの、子どもの観客数では(子ども入場料金を考えると)それを越えるだろう。ストーリーのレベルも予想以上に高いものだった。最強かつ希少なモンスター、ミューのクローンとして作られたミューツウは、自分があくまで何者かのクローンでしかない、つまりアイデンティティの喪失により、自分を創造した人間への復讐を開始する。また、他のモンスターたちを捕獲しそのクローンを作り、本物のモンスターたちを抹殺することで、己も含めたクローンを本物にしようとする。それを阻止すべきピカチューたちなのだが、ピカチューもまたクローンを作られ対決することに。しかしピカチューは戦おうとはしない。そして・・・。といったもので、『自己』とは?がテーマなのだ。今回の大ヒットの要因は、こうした テーマでストーリーが展開したことにもあるだろう。ポケモンの元々の設定自体が、自分が収集したモンスターの中で好みの者を成長させ、ケーブル回線を使って対戦させたり、互いがまだ収集できていないモンスターを交換したりといった、子ども同士がそれぞれの個性を競い合うものであるだけに、このテーマはそのことの意味を問い直させる。2位もまたポケモンがらみなのだが、これは「たまごっち」のようなもので、かつ万歩計になっている。歩けば歩くほどピカチュウが成長する。ということは子どもたちは家でコントローラーを操作してゲームしている訳にはいかず、野外に飛び出すという仕掛けになっている。勢いで3位もポケモン。これはゲームボーイ版の本来(?)のポケモンである。
ゲームボーイでポケモンが登場したのが96年の2月。それからポケモンカード、テレビアニメ、マンガと、メディアミックスされてポケモンブームは続いているのだけれど、2年半以上に渡って人気が衰える様子がまったく見られない。最初のゲームボーイソフトの方だっていまだに毎週の売上ベスト20には食い込んでいるのだ。
ポケモンはポケモンだけでもう、ひとつのジャンルを築いているといっていいだろう。
さて、この3位の「ポケットモンスター ピカチュウ」以下がゲームソフトベスト8となる。だから、おすすめソフトなのだが、ご覧のように、テレビゲームオリジナルの新作ソフトはこの中で「ゼノギアス」(スクウェア)のみである。3、5,8,10がヒットソフトの続編。4,7,8,9,がアーケードのヒットゲームの移植。1位、2位をテレビゲーム以外から選んだので、私の11位12位も挙げてみるとしても「ブレス・オブ・ファイヤー3」(カプコン)、「パラサイト・イブ」(スクウェア)。もちろん前者は続編だし、後者は原作物。つまり、今年は殆ど何も新しい動きはなかったといっていい。ポケモンが独走し、安定した売り上げを見込めるタイトルに制作の力がそそがれ、結果的にも売れたということ。もう一つ指摘しておかなければならないのは、アーケード物の移植が以前より早くなっており、それは、アーケードでプレイする前に、家でまず練習したいユーザーを狙っているからのようだ。なんだかそれって、カラオケボックスで人様の前で上手に歌うためにCDを買うのと似ている。
ファミコン発売から今年で15年。物心がついたころから当たり前のようにテレビゲームをしている世代がもう大学生になっている。つまり、世代が一巡りしたということ。快調に疾走し続けたテレビゲームはいよいよ最初の曲がり角にきている。
1ポケット・モンスター ミュウツウの逆襲(小学館)
2ポケットピカチュウ(任天堂)
3ポケットモンスター ピカチュウ(任天堂)
4リズムマニア(コナミ)
5バイオハザード2(カプコン)
6ゼノギアス(スクウェア)
7グランツーリスモ(ソニー・コンピューター・エンターテイメント
8鉄拳3(ナムコ)
9電車でgo!(ナムコ)
10スターオーシャン セカンドストーリー(エニックス)
11ブレス・オブ・ファイヤー3(カプコン)
12パラサイト・イブ(スクウェア)