牧場物語(前)
設定は、純朴なタイトルそのままなもの。
荒れ果てた牧場を買って、三年間でそれをりっぱにしていくシミュレーション。三年間といっても一月を十日にしてあるので、三六〇日で済みます。しかもこの一日とは、もちろん現実の二四時間やなくて、プレイ時間で数分。と述べれば、楽そうなのやけれど、そうではなく、一日が数分であっても、三六〇日もの長きに渡って、バランスを考えながら、牧場の管理運営しなければならないのは結構大変。
まず最初の年の春はまだ、お金もないので牛なぞ買えない。何をするか。岩を砕き、切り株を掘り起こしして土地を耕す。
折りを見て町にも出掛け種も買う必要がある。
一日の時間は決まっているし、働きすぎると主人公が倒れてしまうので、一日にやれることは限られている。岩を二,三個砕き、切り株も二,三掘り起せばもうフラフラ、時間も過ぎて夜になる。
何とか耕せた土地にはカブラの種まき。そうそう水もやらねばなりません。
とにかくこれが忙しい。
毎日毎日、そうした単純作業の繰り返し。
最近死語になってしまっている、地道って言葉がシミジミ実感されるのです。
労働とはそういうもんやと言い聞かせつつも、なんでゲームでこんなに苦労をするのかと、トホホ状態やね。
わしには、このゲーム合わんのや。止めようと思ったとき、すでに遅し。この地道の罠に見事私はハマっていたのやね。
牧場物語(後)
もう止めようと思って、夜になったから主人公を眠らせた。で次の日の朝。せっかくやからもう一日だけプレイしたろうと、家を出て畑に行くと、なんとカブラが土の中から白い肌を露出しているではありませんか。実際に自家栽培も楽しんだことのある私としては、ゲームを投げ出すにはカブラたちが可哀想で、あわてて収穫しまくりました。ついでに、別の耕地に次のカブラの種を撒いていると、おそらく農協の方でしょう、収穫したばかりのカブラを回収し、貴重な現金を下さった。
単純作業の苦労が初めて報われたわけね。なんだか、すごく嬉しかった。収穫したばかりの畑の隣を見ると、そこのカブラはどうやら明日には収穫できそうな様子で‥‥。
こうして、その日の作業が終わると、明日しなければならないことを確認し、主人公を眠りにつかせるという繰り返しに埋没していったのだった。
やがて、にわとりを飼う余裕もでき、飼えば飼ったで、毎日の餌やりと卵採りが忙しく、そうこうしているうちに、いよいよ牛さんなんかも購入できるようになり、そうすると飼い葉の育成もせねばならず、冬になる前には刈り取る必要もあり、もちろんブラッシングも欠かせず、搾乳は当然のことで、そんな忙しくも充実している日々の中でもやはり、恋愛もしたく、けれど、町まで出掛けると一日の貴重な時間が消費されてしまうので、難しく、という風に、単調な日々の奥深さをこのゲームは改めて教えてくれるのやった。