ドラゴンクエスト ・幻の大地(前)

 ファミコンの名前を世に知らしめたのが、このタイトル。手に入れるために前日から店の前に並ぶ子どもたち。ついには、学校を休まれるのは困るから、発売日を日曜日にせよとまで言わしめ、TVゲームが子どもの心をどれ程捕らえているかを、大人たちに見せつけた。メガヒットしたタイトルは他にもあるけど、社会現象となったのはこれだけ。RPGの元祖ではないけれど、この国のそれの方向を決定付けました。以降のRPGは安直にマネをするか、如何にこのタイトルとの差異化を図るかで成立している、といっても過言ではない。
 徳川家康、大御所様です。「DQを超えるのはDQだけ」。最新作のキャッチコピーが大御所様の自信と誇りを明確に伝えてます。
 とはいえ、自他共に認めるチャンピオン、伝統芸、ゲーム国宝、大御所様であることは、シンドイもの。シリーズ化するに当たって基本線の変更は許されないから。だって手本はいつもドンとそこに鎮座してナンボやから。自らが差異化したらシャレにもならないし、非難ゴウゴウになる。フォークの大御所ボブ・ディランがロックしたら怒られたように。 ごっつう、つらい。

1996/01/10


ドラゴンクエスト ・幻の大地(後)

 このシリーズは、RPGの手本であることが与えられた使命、課せられた命題、定められた運命なのですが、もう一つプレイヤーである少年にとっても、手本として機能しようともしています。戦前の「少年倶楽部」、近年の「少年ジャンプ」、そして「ドラクエ」。読み物、マンガ、TVゲームとメディアは移り変わって来ているし、時代により質的変化はありますが、「少年よ、いかにして男になるべきか」やね。
 最も基本にある教えは「努力」。例えば今回、発売元のエニックスから「マッピィングノート・攻略の手引き」と題された小冊子が三百円で出版されています。「おっ、僅か三百円で攻略とは。さすがソフトの発売元だけのことはある」と思いきやさにあらず。冒険の途次で発見した町村の場所やそこで聞いた重要な情報などを、自分で記入するための学習ノート。頑張らねば。
やれやれ。
 主要テーマを振り返っても一作目から順に、一人での冒険(自我の目覚め)、仲間探し(自己の相対化)、職業(社会での自分の位置確認)、転職(新たなチャレンジ)、結婚(家族の成立)と、成長過程をそのまま踏んでいます。そして最新作は自由な発見。
結婚の次が自由な発見なんて、ドキッとするけど、まあそうなんでしょうね。
 見事と言えば見事なシリーズの進め方。

1996/01/24


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