ジャンピング・フラッシュ(前)
回転より前進! 近代とはそういう時代です。
運動エネルギーなら、例えばエンジンの回転を車の前進運動に変換し、ただただそのスピードを評価するのがそうですし、知識や知恵なら、繰り返し(回転ですね)伝えられて来た老人のそれより、できるだけ新しい情報に価値を置くのも同じことです。それらを、文明の進歩とか発展と呼ぶんやね。
ところが現在は、近代の終焉がささやかれ、新たな価値基準がまだ見えないまま、前進と回転が混沌とし、交錯しています。
輪廻なんかが流行るのもその兆候。もっと身近な事例として、ジェットコースター。あれって正に近代を象徴する遊具なんやね。剥き出しのスピードとでも言いましょうか、観覧車やティーカップなどの回転する遊具を尻目に殺しながら、日常で体験する以上のスピード感を与える遊具。遊園地を近代世界に譬えるなら、ジェットコースターはそこに君臨する、王。やった。
ところが、まずこのジェットコースターが変わり始めましたよね。回転、捻りが加わってきた。そして回りの遊具も、バイキングや魔法の絨毯、ほら、回転をウリにするものが人気を得てきたでしょ。ただし、スピードの称揚もまだ放棄されてはいない。つまり、回転と前進の混沌と交錯。
このソフト、そんな時代の匂いがするのやね。
ジャンピング・フラッシュ(後)
とにかくまずスタートしてみてください。どんなゲームか、どうすればクリアできるのか、どのボタンを押せばどうなるのかなんぞをマニュアルで調べたりせず、すべてのボタンを片端から押し続ける。
あなたは自分が操作しているロボットの視点で画面を見ているのね。このロボット、上下前後左右どんな方向にも動ける。だから、あなたは日常ではまず体験できない(ジェットコースターやバイキングでも無理)感覚を味わえる。空中に高く飛んでから落ちて行くことから、平行移動、前後動、右回転に左回転。三半規管がちょっとヘンになるほど、目まぐるしく、自由に風景が変化する。目眩がする。しかも、モンスターがあちこちから襲ってきて、それを避けたり、ビームを発射したりもしなければならない。いやもう大変。何が何だか、とにかくクラクラになりまっせ。
遊びのおもしろさの重要な要素の一つは目眩。目眩することで私たちは日常とちょっと違う感覚に触れ、うっ血した心が和むのやね。
正直に述べれば私はまだ、このゲームを六分の一しかクリアしていませんし、運動神経がかなり鈍いので、それ以上進めるとも思えない。けれど全然気にならない。ドベーッとした日常や仕事に疲れたとき、このソフトを立ち上げて、目眩、クラクラに身を任せると、ちょっとだけ新たな気分になれます。